再び始まった恋。

あたしの思いも大きい波の音がすべて掻き消してくれる。



もう、いいんだ。


好きな人には…幸せになって貰いたいから。


いつか、またバッタリ会った時は、今度は笑って話したいから。



だから…



「あのさ…」



「ごめんな…」




もう、会わないって伝えようと口を開いた所で…
彼があたしの言葉を遮るように、口を開いた。



え……ごめんな?

何が?

どうして謝るの?



なんの事かわからない、あたしは不思議そうに彼を見た。


彼はなんの表情も変えないで、真直ぐ前だけを…真っ黒な海だけを見て言葉を続けた。



「高校の時の…告白…」



あたしが高校の時に彼に告白した事?

だよね…?



「あー、うん」



「酷い事言って…ごめん」



そう言った彼は、昔の事を思い出したのか…切なげな顔で真直ぐ海だけを見ている。



「ううん、いいよ…昔の事だし」



ほんとは…

思いっ切り傷付いたんだよ。

今更、謝られても困る。


なんて言いたかったけど、彼の切なげな表情と…
ずっとあたし達の会話に昔の事は出てこなかった会話…

過去の話を切り出した彼に…

思った事を飲み込み、気にしていないと言わんばかりの言葉を吐き出していた。





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