再び始まった恋。
そして…
なんだか、彼もこれが最後だと気付いている様にも聞こえたから。
今まで、お互い出さなかった昔の話が彼のサヨナラの言葉に聞こえたから。
だから…
最後の最後まであたしの気持ちをぶつける事なんて、出来なかったんだ。
そして思ってた通り、今までに無かったあたし達の空気をどんよりと包んだ。
過去の話に触れると気まずくなるのをわかっていた。
些細な事でも…
過去に触れるのが怖かった。
あたし達はそれから…
気持ちを押さえる様にこの場所を去った。
帰り道も行きと同じ様に彼にしがみつく。
切ない気持ち一杯で。
彼から離れたくない気持ちが一杯で…
どんどん、見慣れた景色が目に入る。
昼間とは別物になってしまった景色。
キラキラと人工的に作られた光輝く景色。
サヨナラが近付く。
行きとは違い、帰りはそればかり頭の中を支配する。
もう触れる事の出来ない彼の綺麗でひんやりした手。
もう、感じる事の出来ない温かい背中。
あたしの身体に染み付けようとするも…
冷たい夜の風がそれを邪魔する。