再び始まった恋。

ドキンッ―



俯いていた彼があたしの瞳を捕らえていた。


この瞳…逸らせない。


一瞬、逸らそうと思った視線…でも、彼の真っ黒な瞳があたしの瞳を逃がさなかった。



「た、楽しかったよ…」



言葉を出すのにも、見つめられてると…上手く出せない。



「…………。」



「…………。」



そしてドキドキしながらも口に出した言葉の返事は無く…


又もや、沈黙。




でも、あたしと彼は未だに見つめ合っていて…


二人の世界にいる様な…そんな感覚に陥っていた。



ジッと見つめて来る彼をあたしも見返すことしか今は出来ない。



悲しいのと…苦しいのと…切ないのとであたしの心の中をぎゅっと締め付ける。



そんな中、彼の両手があたしの頬へ触れた。


冷えた手と触れられた事で身体がビクッとする。



あたしの顔を手で固定して、彼の真剣な顔があたしに近付いてくる。


ゆっくり…ゆっくりと…



言われなくても、聞かなくてもわかる。



あたし…キスされるんだ。




< 155 / 178 >

この作品をシェア

pagetop