花萌ゆる、恋。
「ほら、どうせジャージ持ってないんだろ。あとタオルも」
「…っ!」
カナは目の前にやってきたと同時に視界が暗くなった。
カナの香りが顔全体に広まる。
視界が暗くなったのはボイっと投げつけられたジャージとタオルのせい。
三上って刺繍で書いてある。
私は顔を上げカナを見た。
「今日2時限で使ったから臭いかもしんないけど」
少し照れてそっぽを向くカナ。
「…ううん、嬉しい。ありがとう」
私は首を横に振りながら、泣きそうになった顔を隠すようにカナのジャージに顔を埋める。
好きがどんどん溢れる。
「匂い嗅ぐなよ、変態」
「っ!変態じゃないよ!」
「匂いは嗅いだのかよ」
「あっ」
図星をつかれ、カナは楽しそうに笑い私もつられて笑った。
カナの笑った顔を見るとなんだかさっきまでの不安が全部吹き飛んだ気がした。
…カナ、大好き。
カナは次移動だからと行って教室に帰っていった。
クラスが違うってすごく残酷。
一緒にいられるのはこうゆう時間しかないもんね。
「やっぱり、いのりのことは特別みたいね」
「え?なに?」
「いやー?なんでもない」
あやの言葉にハテナを浮かべながらカナのジャージに着替え、授業中先生の話そっちのけで目一杯カナの匂いを嗅いでいた。
その時、やっぱり隣の席の男子は変な目で見ていたらしい。(あや談)