花萌ゆる、恋。
「あれっ?ない…」
校舎裏に着き、お弁当を置いた場所に行ったが見当たらずつい声が出てしまう。
なんでないの?
絶対ここのはずなのに。
そう思って辺りをウロウロと模索していると、
「探し物はこれ?オネーサン」
と、なんだか聞いたことのあるような声がして、声がした方向を見ると昼間の少年がお弁当箱2つを片手に持っていた。
あ!私のお弁当!
なんで、持ってるの?
「盗まれちゃうとあれだから、俺が持ってた」
私の気持ちを汲み取ったのか彼はそう言って私にお弁当箱を差し出す。
「ありがとう…」
なんだ、そうゆう事だったのか。
と安心して、お弁当箱に手を伸ばした瞬間に、シュッとお弁当箱が姿を消した。
目の前にあったお弁当箱は今は彼の顔の真横に移動している。
え?なに?
もう一度お弁当箱に手を伸ばすと、またお弁当箱は姿を消し移動している。
意味が分からなくて彼を見上げると、口角が上がっている。
こっ、こいつ!!!
「ちょっと!返してよ!」
ついには私には届かない高さまでお弁当箱を上げられ、私は流石に頭にきた。
だが彼はそんな言葉を聞いていないのか、面白そうに笑っている。
私はもう取り返す気力を無くし手のひらを差し出し、返してと冷たい目で見る。
「なんだ、もう終わりか」
ちぇー、とオモチャを取り上げられた子供みたいな顔をしてお弁当を私の手のひらの上に置いた。