花萌ゆる、恋。


いきなり何?


「俺のこと知らないでしょ?
だから、名前覚えて欲しくて」


彼はしゃがみこんだままそんな事を言って、また満面なく笑った。


藤井梓…

どっかで聞いた事あるような…


何これ、思い出せないと気持ち悪い。



考え込んでいると、前からククっと喉を鳴らして笑う声が聞こえた。



「…俺、よくここ来るんだ。
誰もいないからなんだか心が落ち着ついてさ。」


サァッと風が吹き、髪を揺らす。


私の肩まである髪を手で押さえるがゆう事を聞かずになびく。


彼の、私よりも短い髪も同じように。



「…先輩も、そうでしょ?」



藤井くんの目が髪と髪の間から私をとらえる。


髪が邪魔してあまり見えなかったけど、やっぱり彼の目は綺麗だなぁと思った。



藤井くんも、同じだろうか。


わたしと同じく、辛い思いをしたんだろうか。


分からないけどその力強い目が何かを伝えようとしているようで中々目をそらせなかった。


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