花萌ゆる、恋。
「なんで…?」
身に覚えがなくて首をかしげると、藤井くんは少し驚いた顔をしてすぐに眉間にしわを寄せた。
…藤井くん?
「覚えてないならいい。
やっぱ返して」
「あっ!」
いきなり不機嫌な顔をしたかと思えば、藤井くんは私からボタンを取り上げた。
そして藤井くんは「帰る」と一言だけ告げて、スタスタ校門に向かって歩いてあってしまった。
なんなの、一体。
怒った?
そんな藤井くんの後ろ姿を見ているとピタッと立ち止まった。
そして向きを変え私に向かって大声を出す。
「…またね、いのり先輩!」
そう満足げな顔をして走って校門に向かっていった。
さっきまで怒ってたくせに、また笑顔を見せた藤井くんにクスッと笑みがこぼれる。
さすが1年生、元気だなぁ。
なんて無駄に感心してしまう。
「…あっ!」
そう言えば、なんで藤井くんは私の名前知っているんだろう。
教えてないよね?
誰かに聞いた?
でも誰かって誰?
考えても出てこない答え。
まぁいいか。なんて考えを放置。
私も帰ろうと校門に向かう。
藤井梓くん。
出会ったのは今日が初めてでは無い事を私はまだ知らなかった。
それを知るのは、もう少し後の話。