君にまっすぐ
いつも以上のメロメロ笑顔に今日は一段とキラキラした瞳まで。
あんな表情をするのならば、なぜ先週の誘いを断ったのか。
孝俊は少々納得がいかない。
しかし、今日の車への食いつきを見ると、やはり誰もが知るような超高級車には惹かれるものがあるらしい。
これは武器になるかもしれない、と孝俊の口角が上がる。

「坊っちゃん、おはようございます。」

「おわっ、田中か。いきなり出てくるな。」

突然出てきた田中に孝俊が驚きの声を上げる。

「いえいえ、私はずっとこの付近におりましたよ。坊っちゃんがボーっとしていたのでは?」

実際にあかりのことを考えていた孝俊は何も言えない。

「どうです?森山田さんとはお食事に行けましたか?」

「いや、まだだ。彼女は真面目だからな。でも、彼女が俺に気があるのは間違いないだろうから、時間の問題だろ。」

「ずいぶん自信がおありのようですね。しかし、真面目な彼女とこれまでのような付き合いをするのはどうでしょうか。彼女の上司としても少し口を出したくもなりますが。」

「仕事とプライベートは別だろう。それに俺と少しの間だけでも付き合えるんだ。むしろ、喜ばれるだろう。」

孝俊は得意げな笑顔を田中に向ける。
田中はもはや呆れ顔だ。

「そうですか。では、その時はその時でフォローを考えましょう。」

「お、来たな。じゃあ、またな。」

孝俊は笑顔のままエレベーターに消えていった。
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