君にまっすぐ
愛しのオルディさんに会えたあかりはホクホクの笑顔で管理人室に戻る。
笑顔のあかりをこのビルで《癒しのおじさん》と呼ばれている室長が出迎えた。
「おはようございます、森山田さん。」
「おはようございます、室長。朝はいらっしゃいませんでしたけど、今出勤されたんですか?」
「いいえ、ちょっと見回りに行っていました。」
「室長。ちゃんと家に帰られてますか?昨日も遅かったのではないですか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと休んでますので。こんなおじさんを心配してくれるなんて森山田さんはやさしいですね。」
この室長は本当に休んでいるのだろうかと心配になるくらい、何かあっても、何もなくてもだいたいそこにいる。
穏やかな顔なのにどこか隙の無さを感じる微笑みを向けられると、あかりはいつもそれ以上は何も言えなくなる。
しかし、ミスなくいつも完璧な仕事ぶりを見せる必殺仕事人のような田中のことをあかりはとても尊敬している。
「ところで、とてもいい顔をされていましたが、なにか良いことでも?武堂専務が出勤されたようですが。」
「あ、はい!今日も武堂さんがオルディに乗って来られたので、お目にかかれて嬉しくて。」
「それは、会えて嬉しかったのは武堂専務ではなく、オルディという車ということですか?」
「はい!私、車オタクで車を見るのが大好きなんですけど、その中でもオルディが一番好きなんです。でも、武堂さんに会えたからといってなんで私が嬉しく思うんですか?ただの担当のお客様ですよ?」
やはり、武堂専務はただのお客様でしかないということか、と田中は納得したように頷く。
「しかし、これまではお客様は皆一様に様付けで呼んでいませんでしたか?」
「あ、いや、これは武堂さんがビルのオーナー会社の専務だから私の上司でもあるとおっしゃられまして、様付けでは堅苦しくて嫌だと。やはり、問題ですよね?」
「なるほど。私も武堂専務とお呼びしてますし、専務の希望であれば、さん付けで呼んでもらって結構ですよ。」
わかりました、と明るい笑顔で返事をし業務に戻るあかりを見ながら、さん付けで呼ばせるのが精一杯かと孝俊を思い、田中は思わず軽く笑ってしまった。
だから、私にまだまだだと言われるのですよ、坊っちゃん。
笑顔のあかりをこのビルで《癒しのおじさん》と呼ばれている室長が出迎えた。
「おはようございます、森山田さん。」
「おはようございます、室長。朝はいらっしゃいませんでしたけど、今出勤されたんですか?」
「いいえ、ちょっと見回りに行っていました。」
「室長。ちゃんと家に帰られてますか?昨日も遅かったのではないですか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと休んでますので。こんなおじさんを心配してくれるなんて森山田さんはやさしいですね。」
この室長は本当に休んでいるのだろうかと心配になるくらい、何かあっても、何もなくてもだいたいそこにいる。
穏やかな顔なのにどこか隙の無さを感じる微笑みを向けられると、あかりはいつもそれ以上は何も言えなくなる。
しかし、ミスなくいつも完璧な仕事ぶりを見せる必殺仕事人のような田中のことをあかりはとても尊敬している。
「ところで、とてもいい顔をされていましたが、なにか良いことでも?武堂専務が出勤されたようですが。」
「あ、はい!今日も武堂さんがオルディに乗って来られたので、お目にかかれて嬉しくて。」
「それは、会えて嬉しかったのは武堂専務ではなく、オルディという車ということですか?」
「はい!私、車オタクで車を見るのが大好きなんですけど、その中でもオルディが一番好きなんです。でも、武堂さんに会えたからといってなんで私が嬉しく思うんですか?ただの担当のお客様ですよ?」
やはり、武堂専務はただのお客様でしかないということか、と田中は納得したように頷く。
「しかし、これまではお客様は皆一様に様付けで呼んでいませんでしたか?」
「あ、いや、これは武堂さんがビルのオーナー会社の専務だから私の上司でもあるとおっしゃられまして、様付けでは堅苦しくて嫌だと。やはり、問題ですよね?」
「なるほど。私も武堂専務とお呼びしてますし、専務の希望であれば、さん付けで呼んでもらって結構ですよ。」
わかりました、と明るい笑顔で返事をし業務に戻るあかりを見ながら、さん付けで呼ばせるのが精一杯かと孝俊を思い、田中は思わず軽く笑ってしまった。
だから、私にまだまだだと言われるのですよ、坊っちゃん。