君にまっすぐ
孝俊はあかりをアヴァンに乗せて以降、オルディに乗っていた。
オルディを見た時のあかりの表情が見たいからだ。
アヴァンに乗った時のあかりもよかったが、オルディの時の隠しているつもりが隠しきれていないメロメロ笑顔が好きだった。

あかりの興味が車にしかないことを知って、それならばこれまでのように結婚までの間、他の女性達と軽い付き合いをすればいいのだと何人かとデートをし、バーに出向きその先へ進もうとした。
しかし、なぜかその気に全くならなかった。
食事をしながら、いつもなら苦痛に思っていなかった彼女たちの軽い話も相槌を打つのが精一杯だった。
いやむしろ、あかりと食事に行けば彼女はどんな話をしてくれるのだろうか、やはり車の話なのかなと他の女を目の前に考えるほどだった。
はっきり言って、つまらなかった。
彼女達の話もそんな彼女達に時間を費やしている自分自身にも。
だから、彼女達をホテルに誘うことはなかった。
バーのあとタクシーで送るよという孝俊に彼女達はあからさまに不満顔だったが、有無をいわさない笑顔でタクシーに乗せた。
その後、いつも自宅マンションに帰ったが、車は家の者に指示をして必ず自宅に持ってこさせた。
孝俊本人は自分自身に翌朝会社に向かうのにわざわざ家の者を呼び出すのが面倒だからと言い訳していたが、あかりのメロメロ笑顔を見たい一心だったのは内心気付いている。

そんな1ヶ月を過ごし、昨日も以前パーティーで知り合った女性から連絡を受けて、食事後バーへ行った。
その女性は美人で知性と品があり、これまでの孝俊であれば間違いなくホテルに行き、付き合いも1ヶ月以上になるような割り切った付き合いのできる女性だった。
しかし、孝俊はホテルへは行けなかった。

家に帰りベッドに横になってもそんな行動を繰り返している自分に虚しさが積もる一方で、なかなか寝付くことが出来なかったのだ。
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