君にまっすぐ
「あの…?」

急にハンドルに手を置き下を向いた孝俊にあかりは恐る恐る声をかける。

「うっ…。」

「武堂さん?大丈夫ですか?」

「うっ、あははっ。ははははははは。」

突然笑い出した孝俊にあかりは拍子抜けだ。
孝俊は笑い続けている。

「あの、武堂さん。私、なにかおかしなこと言いましたか?」

「ははっ、あぁ、面白い。」

孝俊は涙が出てくるほど笑い、涙を拭いながらあかりを見る。

「こんなに笑ったのは久しぶりだ。森山田さんって頑固なんだね。」

「私が頑固だから笑ったんですか?」

「ん、まぁそういうことかな。今まで俺の誘いを頑なに断って更に奢るなんて言ってくる女性と出会ったことがなかったからね。新鮮で。」

「何かをしてもらったらお礼をするのは当然のことじゃないですか?」

「あぁ、そうなんだろうけど、これまで俺のステータスに寄ってくるような女性しか周りにいなかったから。俺がお金を出すのが当然だと思っているようなね。」

「そう、なんですか…?」

あかりは孝俊の言葉になんと答えればよいのかとっさに浮かばず曖昧に頷くしかない。

「あぁ、ってこんな話してもリアクションのしようがないよね。」

「いえ…。」

「それじゃあ、こんな機会もめったにないし、森山田さんにおごってもらおうかな?」

「え?あ、はい!もちろんです!」

「何にする?フレンチ?イタリアン?」

「…。」
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