君にまっすぐ
「孝俊さん、駐車場の管理人にまで手を出していらっしゃるの?」

駐車場では何も言わなかった麗子が車に乗り駐車場から出たところで、孝俊に問いかけた。
麗子の言葉にあかりのことまで軽く言われたようでハンドルを握る手に力が入る。

「いや、彼女はただの友達だよ。」

自分で発した言葉なのに胸をえぐるような痛みが走る。

「あら、そうなの?でもあの子は孝俊さんに気がありそうな感じでしたわよ?瞳を輝かせた笑顔を見せていらっしゃったじゃない。孝俊さんも罪な男ね。」

「彼女は、そんなんじゃないから。」

感情を表に出さないようにしているのに、どうしても語気が強くなってしまう。

「彼女と俺は本当にそういう関係ではないですから。もうこの話はいいですか。」

「ええ。私はあなたがあの子とどういう関係だろうと今後どうなろうと興味もありませんし、干渉も致しませんから。お好きにどうぞ。」

冷たい微笑みを見せる麗子を横目で見て、なぜここに座っているのがあかりではないのだろうかと孝俊は考えずにはいられない。
いつものメロメロ笑顔でオルディやアヴァンの魅力を楽しそうに語ってほしい。
そして、一緒に声を上げて笑い合いたい。

孝俊にとって隣りに座る麗子のことはどうでもよく、今はあかりに勘違いされていないかが一番の関心ごとだ。
いや、勘違いでもないのだが。
あかりがお昼休憩に入る時間はわかっていたから、あの時間に降りたというのに、なぜあかりがいたのだろうか。
あかりはこの麗子のことを見てどう思っただろうか。
親しさはないがプライベートの車に乗せることになにか感じただろうか。
いや、孝俊のことを完全に友人としてしか見ていないあかりのことだ。
誰だろう?とは思っても全く気にしていないかもしれない。
婚約者だとは孝俊が言わなければばれないだろう。
麗子を見てあかりがなにか感じてくれていたら嬉しいと思うと同時に、これをきっかけにあかりが離れていってしまったらどうしようという不安がこみ上げ、孝俊は昼食会中そのことばかり考えてしまっていた。




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