君にまっすぐ
オルディさんの本領発揮
ビルの前で孝俊と会ってから約1ヶ月、孝俊は駐車場には現れないままだった。
賢介との関係に結論を出したあとも1回ご飯を食べに行った。
職場も比較的近いし、気さくに会える男友達だ。

最近のあかりの楽しみは白オルディだ。
完璧なスタイルなのに、優しげな雰囲気を併せ持つ。
白オルディを見るたびに心が踊る。
そして同時に胸にズキッと痛くなる。

孝俊を拒否したのはあかり自身だ。
最低だ、と罵った。
本気ではなかったかもしれないが、好きだと言ってくれたのに。
しかし、あの日のことは後悔していない。
あれを受け入れたほうがあかりにとっては辛いことだというのが安易に想像できたから。

ただ素直に会いたいと思う。
たとえ打ち明けられる想いじゃなかったとしても。
自分の気持ちに正直になるほど、その想いは強くなる一方だが、孝俊や賢介が良いと言ってくれた正直さを失いたくない。
想いを自分自身で受け入れ、抱える。
その重みに耐えられるほどそれ以上に強くなればいいのだとあかりは決心していた。



その日も孝俊は現れなかった。
仕事を終えて駅に向かって歩きだす。
今冷蔵庫に入っているものは何だったかな?と今日の晩御飯の献立を考えながら買い物リストを頭に浮かべる。

豚肉があったからしょうが焼きかな?野菜がないから買っていこう。

《しょうが焼き》自分自身で思ったことなのに孝俊を思い出して内心ドキッとした。



プーッ

大きく聞こえてきたクラクションにハッと振り向く。
そこには久々に見るオルディの姿。
運転席からさっと出てくる孝俊があかりに駆け寄る。

「あかり。会えてよかった。」

「孝俊さん…。」

孝俊は穏やかな笑顔だ。
あかりは急に現れた孝俊を呆然としたまま見つめている。

「あかり、今から予定ある?」

「いえ、特にありませんけど。」

「話があるんだけど、一緒に来てくれないか?」

「え?でも…。」

「あかり。心配しなくていいんだ。」

孝俊の言葉にあかりは首を傾げる。



「俺、婚約は解消したんだ。」
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