君にまっすぐ
「でも、花島家の方はどうなんです?なぜ了承を?」

「あそこはほら、付き合ってた彼がアメリカ人とかで付き合いをあちらのお父様が反対されたのよ。それで、京子さんが言うにはどうも別れちゃったみたいで、麗子さんが結婚相手はだれでもいいって言ってるとか聞いたから、じゃあうちの息子はどう?って薦めたの。」

「はぁ。」

孝俊は呆れて頭を抱える。

「言っときますけど、麗子さんそのアメリカ人と別れていませんよ。」

「あら、じゃあ麗子さんもちゃんとお父様を説得すればいいのに。あちらのお父様も麗子さんたちの本気度を確認するために1度反対したら、もう何も言ってこなくなっちゃったっておっしゃってたみたいだから。国際結婚は簡単なものじゃないですからね、1度の反対くらいで諦めてちゃダメよ。」

ここに麗子はいないのに少し熱くなって話をする母。

「そもそも孝俊、お前政略結婚、政略結婚っていってるが、俺と母さんは政略結婚じゃないからな。」

興奮する母をよそに父が口を出す。

「え!?違うの!?」

今日一番の衝撃が孝俊を襲う。

「違うぞ。俺達のこの相思相愛ぶりを見てなぜそう思うんだ。」

「政略結婚のうまくいったパターンかと…。でも母さん側の爺ちゃんも社長だったじゃないか。」

「社長っていってもB.C.ビルディングと比べたら小さい食品卸売の会社よ?不動産と食品に関係性もないでしょ。」

「そうだぞ。母さんが俺の秘書になってそこで愛が芽生えたんだ。」

再び頭を抱えた孝俊はハッと横に立つ田中を仰ぎ見る。

「おい、田中。お前知ってたのか?」

「何をです?」

「父さんと母さんが政略結婚じゃないってことだよ。」

「もちろん存じ上げています。新婚当時のおふたりの様子は周囲が辟易するほどでしたからね。」

「まぁ、当時も今でも俺たちには愛が溢れてるからな。」

恥ずかしげもなくイチャイチャしだした両親を横目に孝俊は立ち上がり、田中に詰め寄る。

「なんで言わなかったんだ!」

「聞かれませんでしたので。」

「なんだと!?」

「言われなかったからと人のせいにするのはダメですよ、坊っちゃん。自分の人生は自分で切り拓くものです。いつか気がついてくれるだろうと私は教育係として自立した自分の考えを持って行動できる人間になってほしいと思い接してまいりました。それは仕事においてもプライベートにおいてもです。仕事においては完璧なのに、プライベートでは投げやりな受け身の姿勢のままで坊っちゃんもここまでの人間かと思いきや、最近はプライベートも充分に揉まれていい男になってきましたね。」

「田中…。」

「孝俊様、と呼ぶにはあと一歩ですね。」

「お前!なんか腹立つな!」

「それは坊っちゃんが未熟だからでしょう。」

ニヤリと口角を上げる田中に孝俊はイラッとするが、小さい頃から孝俊のことを本気で考えてくれていたことに心が暖かくなる。
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