次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「みたいなもんでしょ。少なくとも兄さんはそう思ってるし、そこは文香も分かってる。だから週末の予定だって変更した。でしょ?」

目の前で好奇心に瞳を輝かせている涼介君を軽く睨んで無視し、その隣に座る佑に向かって小さく頭を下げた。

「うちの横暴な上司のせいで週末の誕生祝いにいけなくなってごめんね。しかもプレゼントまで取りに来てもらっちゃって」

私に昔、自分の把握していない彼氏がいた事を知ったあの日、駿介の行動は早かった。

絶対行きたくないと断っていたランドホテルの記念パーティーに出席すると勝手に返事をすると、私に週末の予定変更を命じだのだ。

「親族からの招待とはいえ、俺はこの会社の常務として出席する。だから勿論、秘書のお前も同行だ。佑君には俺から謝っておいたから、悪いが誕生日は別の日にお祝いしてくれ」

数手先を打たれて、反論も断る事も出来なかった。駿介自ら蔵本の家に連絡して謝ったなんて、ここで私が拒否して週末に実家に帰ったとしても家族に怒られてしまう。

次期当主としてはもちろん、私を妹のように大切に育ててくれた駿介は、両親にも佑にも絶大な信頼を得ているのだ。その人がわざわざ頭を下げたのに、と叱られるのが簡単に想像できる。
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