次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「あ、そうだったね」

頭の中で一族の家系図を広げて納得する。確か、学者肌の物静かな人だ。

「佑からそっち方面に進みたいって聞いた時から参考になればってちょくちょく会わせてたし、向こうも全然ウェルカムな感じだったから、心配ないよ」

「でも‥‥」

「文香の弟なんだからさ、俺達兄弟にとっても弟と同じだよ。今回は俺が動いたけど、兄貴だって絶対同じ事するだろうし、さ」

「ん、ありがとう」



涼介くんは私の弟まで家族と思ってくれている。そして、その気持ちはきっと駿介も同じだ。


兄と慕うひとから妹と大事にされ、私の弟だからと、佑も自分の弟と大事にしてくれる。



シンプルな思考。その思い以外、なくなってしまえばいいのに。

いつの間にか違う種類の思慕を育んでしまった私は迷宮の中から抜け出せなくなっている。

折角のランチを曇りなく楽しむ事を、やっぱり私は出来ないでいる。
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