次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
今思えば、私も思春期で色々不安定だったのだ。國井の家で大事にされる事を喜びながら、実の家族と暮らしていない事に訳もなく引け目を感じていた。実の親でない人達から高価な物を買い与えられる事に負い目に感じていた。

そんな漠然とした不安を感じている私を、みんなは見守ってくれていた。

「選んでもいい?」

と言いながら、お祖母様も耀子母さんも駿介も涼介君も、大介父さんまでが私の為にドレスを選んでくれた。時間をかけ沢山悩み、お金じゃない、愛情を示してくれたのだ。

おかげで私は自分を否定する事なく、その後も生きてこられた。あの、発表会のドレスは私が國井家のみんなからの愛情を受け取った記念日でもある。

「変に大人ぶったドレスより、文香にはふわっとした方が似合うよ。ほら、これとか」

愉しげな二人に参加した駿介が手に取ったのはあの発表会のドレスと同じ、シフォンが幾重にも重なった軽やかなドレスだ。

「確かにプリンセスラインは文香に似合うわね」

「このふわっとしたの、プリンセスラインっていうのか?なら確かに文香に似合うはずだな」
< 116 / 217 >

この作品をシェア

pagetop