次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
言われた後もしばらく引きずってしまう事も少なくない。

立場を考えろ、わきまえろと私の中の卑屈な思いも浮き上がらせてしまう。

「とは言え、今日のパーティは規模が大きい。会いたい相手でも会いたくない相手に でも、挨拶以外は会えないさ」

表情が曇ったままの私を励ますように、駿介が明るく断言した。



⌘ ⌘ ⌘



駿介の意見は正しい、と思う。今日のパーティの参加者は300人以上はいるだろう。広い会場にこれだけの人間がいるのだから、挨拶をすべき相手を探すだけでも一苦労。偶然に頼らなければ、希望する人には会えない。

‥‥‥なのに、なぜ会えてしまったんだろう?

挨拶が一段落した駿介の気遣いで、会場の壁沿いに立って休憩していた私は、突然かけられた声に、持っていたジュースを落としそうになった。

「まぁ!文香さん、ちょうどお会いしたいと思っていたのよ」

ジャラジャラとアクセサリーを鳴らしながら近づいてきた睦子叔母は満面の笑みだ。
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