次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「お前、文香か?」
その時、無遠慮な手が私の肩をぐっと押した。
力の入らない目で見上げた先には、ずっと私を嬉しそうに見ているのとよく似た、爬虫類の目。
その目を認識して、嫌悪感にぞくりっと肌が粟立った。
「敏彦さ、ん、お久しぶりです」
睦子叔母の1人息子、敏彦さんは確か駿介より十歳くらい年上。二年ほど前に離婚して実家に戻っているはずだ。
「しばらく見ない間に随分色っぽくなったな。すごいな」
「ありがとうございます‥‥」
会話をするのは多分数年ぶりだけど、母親と同じく「すごい」が口癖なのは変わりないらしい。ニタニタと笑いながら「すっごいんだ」を多用しながら自分の現状を自慢してくる。
そのほとんどを聞き流していたが、最近聞いたばかりの名前を聞いて、問い返した。
「國井化学、ですか?」
「ああ、今はそこの調達部にいるんだ。俺としてはこのままランドホテルの仕事も悪くないと思っていたんだが、どうしてもって頼まれてな」
その時、無遠慮な手が私の肩をぐっと押した。
力の入らない目で見上げた先には、ずっと私を嬉しそうに見ているのとよく似た、爬虫類の目。
その目を認識して、嫌悪感にぞくりっと肌が粟立った。
「敏彦さ、ん、お久しぶりです」
睦子叔母の1人息子、敏彦さんは確か駿介より十歳くらい年上。二年ほど前に離婚して実家に戻っているはずだ。
「しばらく見ない間に随分色っぽくなったな。すごいな」
「ありがとうございます‥‥」
会話をするのは多分数年ぶりだけど、母親と同じく「すごい」が口癖なのは変わりないらしい。ニタニタと笑いながら「すっごいんだ」を多用しながら自分の現状を自慢してくる。
そのほとんどを聞き流していたが、最近聞いたばかりの名前を聞いて、問い返した。
「國井化学、ですか?」
「ああ、今はそこの調達部にいるんだ。俺としてはこのままランドホテルの仕事も悪くないと思っていたんだが、どうしてもって頼まれてな」