次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
グループ企業内でヘッドハンティングされたってことだろうか?あり得ない事ではないが、役員でないなら珍しい。

「そういえば!文香さんの弟さん、國井化学で働きたくってアルバイトするんですって?すっごいわね」

「え?なんで‥‥」

佑のアルバイトは決まったばかりで、まだ働いていない。睦子叔母の情報の速さに驚いて言葉に詰まってしまった。

「いやーね。敏彦さんの会社のことだもの、耳に入るわよ。それにしても文香さんの弟さん、すっごいわね。姉を見習って、ちゃーんと本家の人間への擦り寄り方を知ってるんだから」

明らかに悪意を感じる言い方だけど、涼介くんにお願いしているのは事実だ。曖昧な返事で受け流す。

「だけど、涼介は國井化学で働いてるわけじゃないからな。働いたら、会社にいる一族の人間の方が頼りになるんじゃないか?」

ニヤニヤ笑いを一層深くしながら、敏彦さんが私の肩に置いたままの手を移動させ、むき出しになっている肩をゆっくりと撫でた。

「俺なら色々便宜を図ってやれなくもない。なぁ、文香も弟は可愛いだろ?」
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