次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
今日も駿介の不機嫌は相変わらずだけど、時間が経ったからか、それとも私から折れない気配を読んだのか、少しだけ通常営業に戻っている。

「11時の打ち合わせが早く終わったらランチに行こう」

報告を終えて常務室を出ようとした時、背中に話しかけられた。

「‥‥いいね。駿介は何か食べたいものある?」

せっかく歩み寄ってくれたのだ。振り返った私は砕けた口調で了承した。

「これといってない。文香は?何かあるか?」

「んー、お蕎麦とか?」

最近、駿介の都合さえつけば毎日のように一緒にランチを取っていたから、こんなに間が開くのは久しぶりだ。つい、ウキウキと会話してしまう。

いつの間にか駿介と一緒のランチを当然のように受け止めていた、欲張りな自分にガッカリする。

駿介に然るべき相手が出来たならパートナーを勤めることもなくなるし、二人でランチに行くのもやめた方がいい。相手の女性の為にもっと駿介と距離をとるべきだって、前々から分かってた事なのに。

「夏希さんに悪いな‥‥」
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