次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
ご機嫌な敏彦さんは私の都合も聞かずに、どんどん話を続ける。

「俺が誘ってやってるんだから、勿体つけずにさっさと来たらいいんだよ。なんだ?お前、生意気にも駆け引きしてるつもりなのか?」

「いえ、そんなつもりは。あの、それより今は就業時間ですので‥‥」

「はぁ?俺と電話してるんだぞ。仕事なんて後でいいだろう、考えろ」

平日の昼間、自分だって仕事中のはずなのに、敏彦さんは気にしない。國井の人間だからこそ、自分を厳しく律しなければいけないのに。

こんな根本的な考え方さえ、私達は相容れない。なのに、突然結婚なんて何を考えているのだろうか。

こぼれ落ちそうなため息を必死に堪えていると、「まぁいい」と話題が変わった。

「俺は忙しいから、今日は時間が取れない。明日の夜、ランドホテルに七時だ。食事をするから、ちゃんと装ってこいよ。勿論、下着もだ」

下卑た冗談に敏彦そんは自分で笑って、一方的に電話は切れた。





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