次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
あんな下卑た冗談を言われたら、自分がどうなるかって事を考えないワケにはいかない。しかも土曜日の夜にホテルだ。
睦子叔母からも結婚というワードも出ているのだし、大人の関係を示唆されているのは間違いだろう。

でも敏彦さんと肌を重ねるなんて、考えただけで吐き気がする。

「ね、大丈夫?」

通話の終わった携帯を持ったままの私を幸恵さんが気遣わしそうに、覗き込んだ。私、どれだけの間ぼんやりしてたんだろう。

「もしかして、体調悪い?顔色も良くないし‥‥。もしかしたら、岡崎取締役に急にお見合い頼んだのと関係あるの?」

「いえ、そんなんじゃ‥‥。私、大丈夫ですよ?あの、ちょっとお手洗いにいって来ます」

納得していない顔の幸恵さんにことわって席を立つ。

プライベートでどんな問題があろうとも、今は仕事中なんだからしっかりしなきゃ。

洗面の鏡で気合を入れて廊下に出たら、向こうから歩いてくる駿介が見えた。やっと打ち合わせが終わったんだろう。

「お疲れ様です」

「あぁ、流石に疲れたよ。昼はすまなかったな」
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