次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「プライベートっちゃプライベートだな。‥‥ちょっと‥‥まぁ、頼み事をするから女性が喜びそうな店を押さえておきたいんだ」

髪に手をやり、珍しく困ったような表情の駿介が照れ臭そうに話す。引き結んだ唇は緊張してるように見えるのに、顔全体はどこか嬉しそうで、その姿は恋をしてる男子そのものに見えた。
照れ隠しに視線をそらしつつ、顔は嬉しさを隠しきれていない。

「ーーー承知いたしました」

一礼して、小走りでその場から離れた。


あんな駿介知らない!あんな嬉しそうに恋した顔をする男の人なんて、私の知ってる駿介じゃない!!


ロビーですれ違う社員や受付嬢に驚いたした顔で見られてる事さえ気にせず、全速力で本社ビルから逃げ出した。

「‥‥‥駿介なんて好きじゃないもの。夏希さんと結婚するなら大賛成よ。駿介が幸せになってくれたら、お祖母様だって大喜びだし、みんな嬉しくって‥‥だから、私も嬉しくって‥‥‥」



必死に必死に、自分で自分に嘘をつく。でないと心が壊れてしまうから。辛くって負けてしまうから。

とぼとぼと歩きながら、言い聞かせるように繰り返した。
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