次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
やっぱりあの時聞かれていたのか、と納得するとどうしに、深いため息と一緒に吐き出された駿介の言葉に胸が痛んだ。

「そんな‥‥‥槇村室長のせいなんかじゃないのに」

私が現実から逃げるためにとった行動で誰かに嫌な思いをさせてたなんて。

「ああ、それは俺が言っておいた。文香の馬鹿で唐突な行動に槇村さんが責任感じる必要はないからな。でも、それとお前が見合いしていいかどうかって事は別問題だ!」

「それは‥‥でも、そうね、岡崎取締役にはきちんと謝って、お見合いの話はなかった事にしてもらいます」

敏彦さんと結婚しなきゃいけなくなったのだから、お見合いをするのは相手にも失礼になる。

幸恵さんにお願いした時はお見合いが唯一の逃げ道だと思ってたのに、その数時間後には状況が一転してしまうなんて皮肉な話だ。でも、駿介じゃない誰かと結婚するって事は変わらないけど。

「なんだ?急に‥‥‥やけに素直だな」

「別に、槇村室長に迷惑かけてまでする事じゃないって思っただけ。じゃあ、岡崎取締役に連絡するから切るね」

< 162 / 217 >

この作品をシェア

pagetop