次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
決心して、顔を上げた私に、敏彦さんの下卑た視線が刺さる。

「でも、それも今夜までだ。俺が文香と結婚するって言えば御当主様もあの偉そうな跡継ぎ様も、俺をちゃーんと、本来あるべき地位にせざるを得なくなる」

「えっ!?‥‥‥まさか、その為に結婚を?」

「当たり前だ。何だ?もしかして、俺に惚れられたとか思ってたのか!?母さんの言った通り、お前ホントに身の程知らずだな。お前の価値なんて、國井本家に大事にされてる事以外ないだろうが」

言われた事が衝撃的過ぎて、反応出来ない。確かに急な話だとは思ったけど、まさか私をダシにして、大介父さん達から会社での地位を貰おうと考えていただなんてーーー。

「で、でも、この間のパーティーのとき、敏彦さん、わたしに興味を持たれていたみたいでしたし‥‥」

自分でもイタイとは思うけど、ほんの少しでも私個人に対する好意があった上での結婚話だったと思いたかった。でなければ、必死に覚悟を決めて、この話を受けようと考えていた自分が惨めすぎる。

「ああ、まあな。例え出世の為とはいえ、俺も我慢したくはないからな。でもこないだ久しぶりに会った時、こいつとならセックスするのも悪くないと思ったんだ」
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