次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
大人しく助手席に乗り込んでも困惑顔を続ける私をチラッとみると、駿介はにやりと笑って車を発進させた。

「文香は悩まなくていい。俺は文香が困るような事しないって」

楽しげに言う駿介に反論がもれた。

「そんな事言って‥‥私、わりとよく困らされてるよ?」

「それは取り方の問題だな。観点を変えればこまるどころか喜ぶはずだ」

言ってる事は意味不明だが、これ以上突っ込んで不機嫌になられるのも困る。曖昧に頷いて、窓の景色に視線を移した。

夜が一番長い時期が終わり、そろそろ春の気配が漂ってくる。まだまだ空気は冷たいけれど、お店のウィンドーはキラキラふわふわとした春独特の雰囲気に彩られて、見ているだけでウキウキしてくる。

そんな車窓からのウィンドーショッピングでささやかながら自分を満足させていると、運転席からの視線に気付いた。

「何?」

顔だけ振り返って、キョトンとたずねると駿介もちょっとキョトン顔だ。
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