次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「そ、それより、さ。そろそろ出ないとだよね?」

赤くなった顔は強引に話題を変えでもしないと、元に戻りそうにない。

「ああ、そうだな。そろそろ出ないとゆっくり見られないな」

うなづいた駿介はそのままふいっと移動してしまう。私も急いで後を追おうとするけど着て着たスーツも置きっ放しには出来ない。まとめて持とうとわたわたする間に見失ってしまった。

「お客様、少しよろしいですか?」

バタバタと慌ててフィッティングルームから出ようとしていた私に、さっきの女性店員さんが声をかけてきた。その手にはショップのモノと思われる紙袋とハサミ。

「失礼しますねー。動かないで下さい」

袖口に付いているタグを着ると、その後は紙袋に私の着てきたスーツを、丁寧に入れてくれている。

「あの‥‥」

「お支払いは國井様が先程。今日はこのまま着て帰られるとのことでしたが、よろしかったですか?」

< 43 / 217 >

この作品をシェア

pagetop