次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「なんでだよ。デートの時に相手が自分の選んだ洋服に着替えたんだぞ?払わない男がいるなら、そっちのほうが問題だろう」

「デートじゃないし!駿介だって仕事だってさっき言ってたじゃない」

「個展に行くのは仕事の一環。でもその前後はプライベートだ。だから支払いも俺がするのが当然!
これ以上仕事だ何だってごねるなら、そのワンピース代経費に回すぞ」


仕事に着るわけでもない自分の服を経費で落とすなんて、絶対に出来ない。そんな事したら業務上横領(の気分)だ。

「‥‥‥ありがとう、ございます」

訳のわかんない理論で言い負かされたのも納得いかないけど、これ以上反論しても勝つのは無理だと判断して、お礼の言葉だけを口にした。駿介の思い通りになる事が悔しくて、すんなり言葉が出てこなかったけど仕方ない。私だってそんな出来た大人じゃないんだ。

そのまま膝の上に乗せた手を見つめていたら、不意に頭に温もりがやってきた。
運転しながらわたしの頭を撫でた駿介がぽつりと言う。

「凄くよく似合ってる。誰にも見せたくないくらい似合ってる」
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