次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない

「お前の言う『そういうのじゃない』っていうのが分からないんだ。１０年もずっと一緒にいて恋人じゃないって、そんなのアリか？」

苦さより困惑の方が強く出た顔で駿介が大きくため息を吐いた。

「ごめん。でもホントにそうなの。だから蔵本の両親にも國井の父さん達にも紹介なんてしない」

駿介の認識は大きな誤解の上に成り立ったものだから理解はもちろん出来ないだろう。
実際のミナトは女性で、大事な友達。

真実を知ったら簡単に理解出来る話なんだけどね。

「ね、もうこの話は終わりにしない？
私、國井のみんなをガッカリさせるような事はしないから。それだけは信じていてよ」

空気を変えるように明るい声で話かけると、向かいからもう一つため息が落ちた。

「‥‥分かった。だが一つだけ、確認しておきたい。いいか？」

「何？」

「ミナトはお前の恋人じゃないんだな？」

「‥‥大切な人だよ」