次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
年の離れた弟、蔵本佑は産まれてすぐに手足に軽い障害が見つかって、私は國井の家で暮らすことになった。

佑の手足に見つかった障害はごく軽いものだったし、早期からの熱心で的確なリハビリが身を結び、幼稚園に入園する頃には他の子供達と一緒に生活しても支障がない程になった。
実際、そのタイミングで私が蔵本の家に戻る話も出ていたのだ。

時々帰っていたとはいえ、娘と離れて暮らすのは普通に愛情深い両親にとって耐えがたい事だったんだろう。とはいえ、リハビリなど佑の生活を優先させている状態で帰っても私にシワ寄せが来る。
國井の家で大切にしてもらっているのなら、と佑のリハビリが終わるまでは私の為に離れて暮らす事を選択したんだと思う。

実際、両親からの愛情はずっと、しっかり感じてる。

でも、私が蔵本の家に戻る事はなかった。
元々病弱な佑が園児の時に風邪をこじらせて入院したのだ。
小児病棟への入院だと母親は付き添いでずっと病院にいなければならないし、兄弟でも子供はお見舞いも禁止される。
その後も佑は病弱だったし、数回入院もした。

そして佑がもう少し丈夫になるまでは、と私が蔵本の家に帰る話も延期になった。
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