次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
だから当主の長男たる駿介とも必然的に兄妹のように育った。

小さい頃はなにも分からなかったから駿介とその弟の涼介くんの事を「駿兄さん」「涼兄さん」と呼んで子犬のようについてまわった。

お祖母様も、現当主夫人の耀子母さんもそれを幸せそうに眺めていて‥‥。


でも、無邪気な子供時代もいつかは終わりを迎える。
駿介が20歳になる御祝いのパーティで、私の子供時代は終わった。

中学3年だった私をつかまえたのは当時の駿介の彼女。小さいながらも会社の社長を父親に持った彼女には駿介は逃したくない結婚相手だったのだろう。そしてきっと、私の中で小さく生まれた気持ちにも気付いていたのだ。

「あなたは所詮、お祖母様のお人形でしかないのよ。大人になれば家に返される。ううん、しばらくは本家で育てられたんだもの。きっと一族の駒になって政略結婚するのよ。それが育ててもらった恩ってもんでしょ?」

お祖母様や耀子母さんの愛情は本物だ、そんな事は違うと反論する私に彼女は更に言った。

「あなたみたいな子供に何がわかるの?一族に産まれた者にはその責任があるの。あなたの責任は一族の、駿介の駒になることなのよ」
< 7 / 217 >

この作品をシェア

pagetop