次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
不思議なお誘い
週明けの月曜日、また始まった1週間への憂鬱に耐えつつ仕事にいそしんでいると、夏希さんから電話が入った。しかも会社の電話だ。

『こないだ、文香ちゃんの番号聞くの忘れたからこっちに電話しちゃったー。ごめんねー』

いつもは落ち着いたトーンの声しか聞かせない会社の電話から、夏希さんのハイテンションな声が出てくるだけで不思議と笑顔になる。

「気にしないで下さい。私も連絡先をお渡しせずに失礼しました」

『フフッ。ね、会社の電話だから敬語使ってるの?なんか文香ちゃんの敬語、新鮮ー!』

いつも通り静かな秘書課のデスクで受けた電話だから、周りを気にしての話し方なのに。夏希さんにあっけらかんと言われると私も笑い出しそうになる。

「一応、社会人なので。それで、ご用件は?」

緩んでしまう頬は完全には引き締められていないから、電話口の夏希さんにも私の微かな笑いが伝わっているのだろう。笑わせてごめんね、と前置きをしてから要件を話し出した。

『今週の金曜に個展の打ち上げをするのよ。お世話になった人や関係者へのお礼も兼ねて。でね、軽いパーティにするから文香ちゃんもお友達とどうかなって。ほら、こないだの子とか誘って』
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