次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
一方の私は固まったまま、取り残されて。ゴホンっというワザと大きな槙村さんの咳払いでやっと現実に戻った。

恐る恐る周りを見渡すと、驚きに固まっていたであろう幸恵さんが、私と同じく槙村さんの咳払いで仕事を再開したのが見えた。



あぁ‥‥なんか誤解を生んだ気がする。結構な高確率で。



違います!と大声で訂正したいトコロだけど、そんな事したら誤解は大きくなりそうだ。諦めて、私も静かに仕事を再開させた。



⌘ ⌘ ⌘


金曜日、定時と同時に席を立つ。

「幸恵さん、ではすみませんが今日は帰らせて頂きます」

「はーい。気にしないで、パーティ楽しんで来るのよ!仕事絡みじゃないパーティなんて、文香ちゃん普段ないんだし」

確かに。駿介のパートナーとして華やかな席に行く事は多いけど、その9割以上が仕事絡みだ。たまにある仕事じゃないパーティは一族絡みだしね。

一族の端くれ、社長の親族。なかなかに難しい私の立場を幸恵さんはちゃんと理解してくれて、気遣ってくれる。

凄くありがたい。
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