次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「もちろん、みんなそれを望んでる。駿介だって。それにね、駿介にも一族に利益になる相手と結婚する責任があるの。それは、あなたじゃないことくらい、そろそろ分かるでしょ?」


会場の隅で攻めるように言われて、何も反論なんて出来なかった。

正直、生まれたばかりの駿介への恋心が叶わないものな事は気付いていた。年齢差ももちろんだけど、駿介は初めて会った時から、ずっと誰より特別だったから。それでも、毎日近くにいて惹かれないなんて無理な話だ。

後輩として送った学生生活で聞いたのは伝説となっている駿介の逸話。勉強、運動、統率力にカリスマ性。

きっとこんな王子様の隣は綺麗なお姫様がお似合いなんだろうって事も、それが自分じゃないって事も分かり始めていたから。



でも、私は『妹』としてなら側にいられるから。

勝ち誇ったように見下ろす彼女の視線を俯いたままで受け止めて、私は生まれたばかりの恋心にそっとフタをして心の隅にしまい込んだ。



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