次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
そこまで言ってから、夏希さんの視線が私に向く。

「だって駿介君よ?あの頭の良い人がそんな馬鹿みたいな勘違いするなんて、ありえないわ」

思わず、視線を伏せた。私がワザと誤解させてるんだって、夏希さんは気付いてるんだ。

「あ、あの‥‥‥」

「ま、事情は分からないでもないの。私もこんなだけど、一応社長令嬢って立場だからね。だから文香ちゃんに問いただすつもりも、駿介君の勘違いを正すつもりもないのよ」

「‥‥‥ありがとうございます」

「私も共犯です。すみません」

俯いたままお礼を言う私を気遣うように、湊の声が聞こえた。

「責めるつもりはないのよ。今日だって、私の感が正しいか確かめたかっただけだし。もー、そんな深刻に謝らないでよ」

空気を変えるように明るく言った夏希さんはそっと私の肩に触れて、顔を上げさせる。

「でもね、後悔はして欲しくないかな。文香ちゃんも駿介君も私には大切な妹や弟みたいなものだからね」
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