次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「美味いな」

私を見つめたまま、唇の端についたソースを指でぬぐう仕草は色気が溢れている。

こんな駿介の顔、初めて見る。兄でも上司でもない、男の顔だ。

もう手首は掴まれていないのに、私の身体は駿介の行動に拘束されたまま、動く事が出来ない。思考さえストップしたままだ。

「な‥‥‥」

どうにか言葉をだそうとするけど、開いた口から出るのは音だけ。意味を成す言葉にならない。


余りに固まり過ぎた私に、駿介がクスクスと笑い出した。

「付き合った事すらない文香にはちょっと刺激が強すぎたか?」

揶揄う口調にやっと私の身体も正常に動き出した。

ブリトーを皿に戻し、駿介を抗議の声をあげる。

「私の付き合った事あるなしは関係ないでしょ。恋人でもないのに、さっきみたいな事するのは、常識の範囲を越えてる。セクハラになる行為だよ」
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