冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
7章 支え
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 ――“眩暈くらいはするかもしれないな”

 グレイスがメリーに吹き込んだのは、きっと間違いないとフィリーナは確信する。
 自分と同じように。
 メリーと居場所を入れ替わった自分は、グレイスにとっては不必要な存在。

 ――”野放しにはしてもらえなさそうだ”

 余計なことを知っているからこそ、いつここから消されてもおかしくはない。
 ディオンに注意を促されたように、フィリーナの置かれている状況は芳しくないのだ。
 国の安定を揺るがしかねない重大なこととなってしまった自分の甘さが招いた事態に、大いなる反省と後悔が重く圧し掛かる。

 でも……

 ――“私が、君を守ろう”

 漆黒の瞳が真っ直ぐに見下ろし放った言葉を思い出し、胸の奥がむずりとする。
 ディオン王太子は、バルト国の将来を懸念して国のために言ったまでだ。
 自身の手の届くところの全部を守りたいと、心からそう願っているだけなのに……

 ――私なんかのためだけじゃない、お国のためよ……

 そう思うと、かすかに心の隅が沁みるような感じがしたことには、そっと蓋をした。


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