冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「い、いえ……」
ふるふると頭を振り、小さな声しか出なかったフィリーナの横で、ダウリスが代わりに答えた。
「娘は自分で混入を見破ったようなので」
すっとディオンの前に差し出された先の黒ずんだ銀スプーン。
「なんてことを……!」
ディオンは悔し気に大きく溜め息を吐き出した。
自分なんかのために、一国の王となられるお方に不安と心配を掛けさせてしまっている。
ディオン王太子はもうすぐ開かれる晩餐会の準備や、戴冠式、婚儀も控えているのに。
余計なことに手間を取られている時間などはないのだと、フィリーナは酷い罪悪感にさいなまれる。
「……もうしわけ、ございません……」
漆黒の瞳から視線を落とし、深く頭を下げる。
今自分の身に何かがあれば、王宮が混乱するどころか、その混乱が国の不安を煽りかねない。
私欲のために招いた事態は、自分で収集しなければいけないのに。
グレイスの心を知る自分に、何かできることはないのかと考えていたのに。
ふるふると頭を振り、小さな声しか出なかったフィリーナの横で、ダウリスが代わりに答えた。
「娘は自分で混入を見破ったようなので」
すっとディオンの前に差し出された先の黒ずんだ銀スプーン。
「なんてことを……!」
ディオンは悔し気に大きく溜め息を吐き出した。
自分なんかのために、一国の王となられるお方に不安と心配を掛けさせてしまっている。
ディオン王太子はもうすぐ開かれる晩餐会の準備や、戴冠式、婚儀も控えているのに。
余計なことに手間を取られている時間などはないのだと、フィリーナは酷い罪悪感にさいなまれる。
「……もうしわけ、ございません……」
漆黒の瞳から視線を落とし、深く頭を下げる。
今自分の身に何かがあれば、王宮が混乱するどころか、その混乱が国の不安を煽りかねない。
私欲のために招いた事態は、自分で収集しなければいけないのに。
グレイスの心を知る自分に、何かできることはないのかと考えていたのに。