冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
8章 溢れる想い
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あれから、食事のたびに気をつけてはいたものの、目を光らせているダウリスに申し訳が立たないほど何事もなかった。
ただ――……
「フィリーナ! 回廊が汚れていたわよ、ちゃんと掃いたの!? クロスの洗濯もまだよね!? 客室の用意もしなきゃならないのに、使えない人間がいても手間が増えるだけよ! さっさと済ませてちょうだい!」
「は、はい……かしこまりました」
メリーからの集中的な指示には、さすがに疲弊してきた。
たしかに、晩餐会を翌日に控えた王宮内は慌ただしかった。
多くは居ない限られた使用人の数で、広い王宮を隅々まで仕立てるのだから。
フィリーナが指示されるのは主に雑用。
まるで目の敵のように次々と押し付けられた。
――たぶん、目の敵には違いないんだろうけれど……
あの変色したスプーンを思い出し、身震いをしながら回廊の掃除へと向かう。
途中、フィリーナの動向を見守っているダウリスと目が合うと、メリーの嫌がらせのような指示を見ていたのか、気の毒そうな眼差しを向けられた。
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あれから、食事のたびに気をつけてはいたものの、目を光らせているダウリスに申し訳が立たないほど何事もなかった。
ただ――……
「フィリーナ! 回廊が汚れていたわよ、ちゃんと掃いたの!? クロスの洗濯もまだよね!? 客室の用意もしなきゃならないのに、使えない人間がいても手間が増えるだけよ! さっさと済ませてちょうだい!」
「は、はい……かしこまりました」
メリーからの集中的な指示には、さすがに疲弊してきた。
たしかに、晩餐会を翌日に控えた王宮内は慌ただしかった。
多くは居ない限られた使用人の数で、広い王宮を隅々まで仕立てるのだから。
フィリーナが指示されるのは主に雑用。
まるで目の敵のように次々と押し付けられた。
――たぶん、目の敵には違いないんだろうけれど……
あの変色したスプーンを思い出し、身震いをしながら回廊の掃除へと向かう。
途中、フィリーナの動向を見守っているダウリスと目が合うと、メリーの嫌がらせのような指示を見ていたのか、気の毒そうな眼差しを向けられた。
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