冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
そう、明日は大切な日。
諸外国の王族や貴族が集まり、そこで大々的にディオン王太子とレティシア姫の婚約が発表される。
他国を刺激することなく、ヴィエンツェ国を守るために。
フィリーナの胸にちくりと何かが刺さり、自然と視線が落ちる。
「グレイスのことが心配か?」
「えっ」
「目の前で思い通う相手が婚約を発表するのだ、あれが辛くないわけがないからな」
「……」
――私、今……
誰もが認める見目麗しい、ディオンとレティシア姫の似合いの姿。
すぐにでも目に浮かぶその姿に、フィリーナの胸はぎゅっと締めつけられた。
「あれから、グレイスにはすっかり避けられてしまっている。
今頃になって、あの食事の時にあれが見せた苛立ちは君との仲を妬いたものなどではなかったと気づいた。今までもあれに辛い思いをさせていたのかと思うと、申し訳が立たない」
「だからこそ、ディオン様は、レティシア様を目いっぱいに幸せにしてさし上げなくてはならないのですよ」
「ああ、その通りだな」
ディオンを慰めるつもりで言っていたのに、彼の心苦しさがまるでフィリーナに伝染してきたかのように、胸が苦しい。
諸外国の王族や貴族が集まり、そこで大々的にディオン王太子とレティシア姫の婚約が発表される。
他国を刺激することなく、ヴィエンツェ国を守るために。
フィリーナの胸にちくりと何かが刺さり、自然と視線が落ちる。
「グレイスのことが心配か?」
「えっ」
「目の前で思い通う相手が婚約を発表するのだ、あれが辛くないわけがないからな」
「……」
――私、今……
誰もが認める見目麗しい、ディオンとレティシア姫の似合いの姿。
すぐにでも目に浮かぶその姿に、フィリーナの胸はぎゅっと締めつけられた。
「あれから、グレイスにはすっかり避けられてしまっている。
今頃になって、あの食事の時にあれが見せた苛立ちは君との仲を妬いたものなどではなかったと気づいた。今までもあれに辛い思いをさせていたのかと思うと、申し訳が立たない」
「だからこそ、ディオン様は、レティシア様を目いっぱいに幸せにしてさし上げなくてはならないのですよ」
「ああ、その通りだな」
ディオンを慰めるつもりで言っていたのに、彼の心苦しさがまるでフィリーナに伝染してきたかのように、胸が苦しい。