冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
 ――よかった、本当に。

 いつからか退いていた恐怖に変わり、溢れ出す安心感に涙がぼろぼろと関を切って零れだした。

「これはどう対処致しましょうか」
「さっさと牢にぶち込んで極刑にするといいわッ!!」

 叫ぶ悪魔の化身と化したメリーは、ダウリスに押さえられたまま笑い出す。

「ひとまずは、地下に。食事は十分に与えるよう」
「かしこまりました」
「処分は後日考える」
「御意に」

 冷静な二人はメリーの叫びをものともしない。
 ディオンの腕の中から横目にうかがうと、メリーは腕を縛られ、喚く口を布で塞がれていた。


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