冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
何往復したかわからない大広間では、優雅な人達が和気あいあいと語らい合っている。
まだ料理のない席を探しながらワゴンを押していると、ある一角からざわめきが消えた。
連鎖するように広がる静粛の根源へと顔を上げると、大広間の正面扉が大きく開かれ、そこから今日一番の上客が登場してきた。
「あれが、噂に聞くヴィエンツェの姫か」
「ほう、これはお美しい」
あちらこちらから感嘆の声が上がる。
人々の隙間から見えた空色のドレスに、胸がぎゅっと苦しく掴まれた。
フィリーナなんかでは到底敵うはずのない美しく高貴なお方。
――レティシア様……
誰もが溜め息を零すほどの美女。
その前を、恰幅のいい紳士が大広間の奥へ歩んでいく。
前にも一度こちらへ来たことがある、ヴィエンツェ国の国王。
レティシア姫の父だ。
決して傲慢なようには見えない朗らかな国王は、玉座に着く主催の王子二人の前まで辿り着いた。
まだ料理のない席を探しながらワゴンを押していると、ある一角からざわめきが消えた。
連鎖するように広がる静粛の根源へと顔を上げると、大広間の正面扉が大きく開かれ、そこから今日一番の上客が登場してきた。
「あれが、噂に聞くヴィエンツェの姫か」
「ほう、これはお美しい」
あちらこちらから感嘆の声が上がる。
人々の隙間から見えた空色のドレスに、胸がぎゅっと苦しく掴まれた。
フィリーナなんかでは到底敵うはずのない美しく高貴なお方。
――レティシア様……
誰もが溜め息を零すほどの美女。
その前を、恰幅のいい紳士が大広間の奥へ歩んでいく。
前にも一度こちらへ来たことがある、ヴィエンツェ国の国王。
レティシア姫の父だ。
決して傲慢なようには見えない朗らかな国王は、玉座に着く主催の王子二人の前まで辿り着いた。