冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。
 本日は社交の場も兼ねておりますゆえ、外交の親睦として大いにご活用くださいませ。

 バルト国は近隣諸国のおかげもありまして、安定の一途を辿っております。
 しかしこれまで、国の安定を図ってきた父も、床に伏して長く王政に携わっておりません。
 そこで、まもなく、私が王位の継承をすることとあいなりました」

 大々的に王位継承を発表されると、会場は盛大な拍手に包まれる。

「それと同時に、王としての職務に従事するにあたり、私にも心の支えというものがあれば尚一層精力的に王政に取り組めるのではと、この度このバルト国に、王妃としてヴィエンツェ国の王女を迎えることとなりました」

 ディオンが真っ直ぐな澄んだ声で宣言すると、さらなる拍手が沸き起こった。
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