冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
次の演奏が始まると、紳士の方々が各々女性の手を取っていく。
手にしていたグラスは、そこここに待機している使用人達が引き受ける。
フィリーナも例に漏れずグラスを集めにトレーを抱え直した。
少し足元のふらついている紳士から飲みかけのグラスを受け取ろうとすると、フィリーナがトレーを差し出す前に手を離されたそれが、床に落ち見事に砕けた。
耳に障る音は優雅な音楽を割き、周囲の視線を一手に集める。
グラスを落とした紳士は我関せずの顔で、一人の女性の手を取り円舞の中へと消えて行ってしまった。
残されたフィリーナは、ざわつく周囲に気を配りながら散らからる硝子の破片と葡萄酒が汚した床を片づける。
危険な破片だけは取り除き、床を染める赤紫色を拭き取っていると、しゃがむ私に気づかなかった誰かの足がぶつかってきた。
あ、と思ったときには遅く、つまずいた紳士の葡萄酒がグラスの中から飛び出す。
せっかく拭いていた床は、しゃがんでいたフィリーナとともに再び赤紫色に濡らされた。
手にしていたグラスは、そこここに待機している使用人達が引き受ける。
フィリーナも例に漏れずグラスを集めにトレーを抱え直した。
少し足元のふらついている紳士から飲みかけのグラスを受け取ろうとすると、フィリーナがトレーを差し出す前に手を離されたそれが、床に落ち見事に砕けた。
耳に障る音は優雅な音楽を割き、周囲の視線を一手に集める。
グラスを落とした紳士は我関せずの顔で、一人の女性の手を取り円舞の中へと消えて行ってしまった。
残されたフィリーナは、ざわつく周囲に気を配りながら散らからる硝子の破片と葡萄酒が汚した床を片づける。
危険な破片だけは取り除き、床を染める赤紫色を拭き取っていると、しゃがむ私に気づかなかった誰かの足がぶつかってきた。
あ、と思ったときには遅く、つまずいた紳士の葡萄酒がグラスの中から飛び出す。
せっかく拭いていた床は、しゃがんでいたフィリーナとともに再び赤紫色に濡らされた。