冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「……それはまずいね」
「ああ、このままにしておくのは、国民の生活どころか、国の存続すら危うい」
朝から神妙に話し込む二人へ、順番に給仕していくフィリーナ。
「どうするつもり?」
「一度ヴィエンツェへ出向いた方がいいだろう」
パンの入った籐のかごを二人の間に置いたところで、フィリーナの心臓を飛び跳ねさせる言葉が手元を震わせた。
「騎士団を率いて、僕が行っても構わないけれど」
「いや、まずは自分の目で見ておきたい。今回は留守を頼む」
「バルトもずいぶん平和になったが、丸腰では少々不安が残る」
あれはそうだ夢だったのだと、フィリーナは強く心に念じながら、震えている気がする手つきで、白身の焼き魚の載った皿を静かに並べていく。
続けて置いた皿に、抱えていたボウルから黄金色のスープを掬い上げると、
「そうだね、わかった。……それで、レティシアの様子は?」
グレイスの声で聞こえた名前に、レ―ドルを持った手がびくりと反応してしまった。
「ああ、このままにしておくのは、国民の生活どころか、国の存続すら危うい」
朝から神妙に話し込む二人へ、順番に給仕していくフィリーナ。
「どうするつもり?」
「一度ヴィエンツェへ出向いた方がいいだろう」
パンの入った籐のかごを二人の間に置いたところで、フィリーナの心臓を飛び跳ねさせる言葉が手元を震わせた。
「騎士団を率いて、僕が行っても構わないけれど」
「いや、まずは自分の目で見ておきたい。今回は留守を頼む」
「バルトもずいぶん平和になったが、丸腰では少々不安が残る」
あれはそうだ夢だったのだと、フィリーナは強く心に念じながら、震えている気がする手つきで、白身の焼き魚の載った皿を静かに並べていく。
続けて置いた皿に、抱えていたボウルから黄金色のスープを掬い上げると、
「そうだね、わかった。……それで、レティシアの様子は?」
グレイスの声で聞こえた名前に、レ―ドルを持った手がびくりと反応してしまった。