冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「お前は一体何がしたい……っ!?」
「兄さんは知らないのか? 僕達がどれほど密な時間を過ごしてきたのか。知らないなら、教えてやろう」
「おやめください、グレ――……っ」
頬から滑り込んでくる柔らかな口唇がフィリーナの言葉を封じ、目を見開く。
ディオンとレティシアの婚約が発表されてしまったからなのだろうか。
自棄になっているように感じるグレイスの気持ちが、冷たい口唇から伝わってきて、胸が痛い。
見開いた目から、痛みに触れた涙がはたはたと零れ落ちてくる。
――グレイス様の痛んだお心は、どうやったら癒してさし上げられるのだろう。
「レティシアと、……王位を渡せばいいのか?」
ふっと口元から柔らかさは消えるものの、逃さないようにとぐっとグレイスの懐に抱き込まれる。
強く抱かれる腕の中から振り返ると、ディオンは切なげに目を細めていた。
「兄さんは知らないのか? 僕達がどれほど密な時間を過ごしてきたのか。知らないなら、教えてやろう」
「おやめください、グレ――……っ」
頬から滑り込んでくる柔らかな口唇がフィリーナの言葉を封じ、目を見開く。
ディオンとレティシアの婚約が発表されてしまったからなのだろうか。
自棄になっているように感じるグレイスの気持ちが、冷たい口唇から伝わってきて、胸が痛い。
見開いた目から、痛みに触れた涙がはたはたと零れ落ちてくる。
――グレイス様の痛んだお心は、どうやったら癒してさし上げられるのだろう。
「レティシアと、……王位を渡せばいいのか?」
ふっと口元から柔らかさは消えるものの、逃さないようにとぐっとグレイスの懐に抱き込まれる。
強く抱かれる腕の中から振り返ると、ディオンは切なげに目を細めていた。