冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
11章 守るべきもの
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 夜に眠る王宮内の長い廊下の突き当たりまで行くと、階段を降りられないディオンは突然フィリーナに振り返ってきた。
 そのまま国王のところに行くのかと思ったのに、フィリーナを見つめながら短く溜め息を吐く。

「グレイスとは、密な時間を過ごしていたのか?」

 目元を哀し気に歪めるディオンに、胸がちくりとした痛みを感じる。
 目の前で見せつけてしまった様は、ディオンの心に苦しさを与えてしまったのだろうか。

 そうかもしれないと思うのは、自惚れ。
 だけど、ほんの少しでもいいから嫉妬していたのなら、奇跡のような幸せを胸に一生を生きれるのではないかとフィリーナは思った。

「わたくしは、グレイス様の毒のような甘さに溺れておりました。……申し訳ございません」
「なぜ謝ることがある? 君があれを支えてくれるならいいと、前々から思っていたのだから……」
「本当にそうお思いですか?」

 グレイスとの仲を認めようとするディオンに、胸がずきりと強い痛みを走らせる。
 あまりにも辛い言葉を聞きたくなくて、思わず遮ってしまった。
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