冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
３章　いざない
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　広間の様子に気づき、見開いた目の奥に怒りの炎を燃やしながらも、新しい食器を持って来てくれたメリー。
　給仕室に引っ張りこまれるなり、ガミガミとお小言を言われた。
　様子のおかしな理由を訊かれたものの、まさかグレイス王子とレティシア姫が愛を囁き合っていただなんて言えるわけもなく、メリーには休暇をはしゃぎ過ぎてしまって疲れていたと苦しい言い訳をするしかなかった。

　フィリーナは、朝食の後片付けのあと、逃げるように誰も居ない広間に戻ると、食事の済んだ長テーブルから白のクロスを剥ぎ取った。
　主の前で粗相をしてしまった罰を、クロスの洗濯だけで済まさせてもらたのはとてもありがたかった。

　王宮の外の洗濯場は、燦々と大地を照らす太陽光を遮る屋根の下にある。
　大きなクロスも十分に広げられるだけの四角に囲われた石積みには、こんこんと湧き出る水が波を打ちながら溢れている。
　その足元でたらいに水を張り、石鹸水を作ってクロスを浸していると、フィリーナの後ろから不意に影が差してきた。
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