冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「先日ははるばるのご来訪、ありがとうございました」
先頭を切って広間に入ったディオンは、うやうやしく国王様に頭を下げる。
ごくりと口の中のものを飲み込んだとわかる大ぶりな喉を上下させ、国王は椅子をひっくり返して勢いよく立ち上がった。
そばに居た美女が「きゃ」と小さな悲鳴とともに跳ね飛ばされる。
「こっ、これはこれはディオン王子、グレイス王子まで! せ、せせ、先日は大変お世話になりました!」
大げさすぎるくらいのわざとらしい言葉に、ディオンの隣のグレイスとともに後ろに控えていたフィリーナも頭を下げた。
「今日は、お二人揃って一体どういった御用件で?」
慌てた様子の国王は手元のクロスで口元を拭うと、引きつった笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「レティシア姫に謁見に参りました。お忘れ物をされていたようで。
それで、姫は今どちらに?」
ディオンの表情は、後ろからはうかがうことはできないけれど、いつもよりもずっと低く、かすかに棘を孕んでいるように聞こえるのは気のせいではないと思う。
先頭を切って広間に入ったディオンは、うやうやしく国王様に頭を下げる。
ごくりと口の中のものを飲み込んだとわかる大ぶりな喉を上下させ、国王は椅子をひっくり返して勢いよく立ち上がった。
そばに居た美女が「きゃ」と小さな悲鳴とともに跳ね飛ばされる。
「こっ、これはこれはディオン王子、グレイス王子まで! せ、せせ、先日は大変お世話になりました!」
大げさすぎるくらいのわざとらしい言葉に、ディオンの隣のグレイスとともに後ろに控えていたフィリーナも頭を下げた。
「今日は、お二人揃って一体どういった御用件で?」
慌てた様子の国王は手元のクロスで口元を拭うと、引きつった笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「レティシア姫に謁見に参りました。お忘れ物をされていたようで。
それで、姫は今どちらに?」
ディオンの表情は、後ろからはうかがうことはできないけれど、いつもよりもずっと低く、かすかに棘を孕んでいるように聞こえるのは気のせいではないと思う。